そんな自然豊かな中で「サミチャ」と知合った。 サミチャは、ごく普通なネパール人の５歳の少女。笑顔が可愛くて、好奇心旺盛。そしてわがままで泣き虫。そんな少女との出会いがいい想い出になった。
快晴のある日、ここポカラのベワ湖のほとりで昼寝をしていると、５歳くらいの可愛らしい少女を連れた30代くらいの小柄な男がやってきた。男の名前はソビットで職業はボートマン。時々トレッキングのガイドもやっていると言う。
このヒマラヤの地「ポカラ」はトレッキングの地ともいわれている。ソビット氏とトレッキングの話をしていると、少女は私の前に出てネパール語で歌を歌い始めた♪♪♪彼女の名前は「サミチャ」。少女が歌うネパール語の歌は、心休まる私に更にやすらぎを与えてくれる。
私がサミチャに拍手を送り「アンコール・アンコール」と言うと、うれしそうに今度は、別の曲を歌い始めた
こうしてサミチャの「ネパールの歌発表会」が終わると、ソビット氏は私を家に招待してくれた。
ソビット氏の家は６畳程の部屋が２部屋。更に野菜などの自家栽培が出来る庭付き。家にはソビット氏の奥さんとサミチャの妹、ソミカ（３歳）がいた。
ソミカは、初めこそ私に警戒をしていたが、日本の本やカメラに興味しんしんといった感じですぐに仲良くなった。
そして、ソビット氏と話をして、彼がガイドで一泊二日のヒマラヤトレッキングに行く事にした。更に５歳のサミチャも一緒にトレッキングに行きたいと言う。「え〜え大丈夫なの？」って言うと、ソビット氏が「サミチャはコミ(私)とトレッキングに行きたいんだよ。大丈夫、サミチャが疲れたら私が担いで行くから」と言う。
トレッキングのコースもきついわけではないし、ネパールの子供と一緒にハイキングのつもりで行けば楽しいかもしれない。そんな事を考えて結局３人でトレッキングに行く事にした。
ポカラのベワ湖の中心街からバスで１時間。ここがトレッキングの出発点。小鳥のさえずりに静かな山々の景観は、どこか日本の山奥の田舎風景に似ている。
ここから一泊二日のトレッキングが始まった。
１時間ほど歩いて昼食。更に１時間ほど歩いてチャイ(お茶)休憩とお昼寝。更に１時間程歩いたらもう夕暮れ。サミチャはさすがに疲れたらしく、最後の１時間はソビット氏と私が交代でおんぶ。山の夜は早い。夜の８時頃には山小屋のふとんにもぐっていた。
翌日は、朝からヒマラヤが絶景！ポカラで見るヒマラヤよりも更に間近で見れている。この日は５時間程歩いた。初めは、ヒマラヤの絶景のもと、お互いに日本の歌・ネパールの歌を交代で歌い合って楽しかったが、アップダウンが激しく５歳のサミチャにはこたえてきた。途中からグズり出す。歩いていると勝手にしゃがみこむ。用を済ませたばかりなのに、またピーがしたいと言って急にしゃがみこむ。
仕方なく私が肩車をして「ベーリ・ベリきれい」「ベーリ・ベリむずかしい！(サミチャにとってトレッキングが難しいという意味で）」などと言うと、サミチャはニコニコして「ベーリ・ベリむずかしい」と言って機嫌がなおってきた。これはサミチャが唯一喋れる日本語。その後「ベーリ・ベリむずかしい」を何連発も言っていた。
そんなこんなで、サミチャにとっても私にとってもベビーなトレッキングが無事に終わった。
こんなサミチャとの日々、トレッキングに行ったり、ボートに乗ったり、近所で遊んだりと４日程一緒に過ごした。
でももうお別れ。ソビット氏の家に行き、これから２００ｋｍ程東方のカトマンドゥへ行く事を告げると、サミチャは泣き出してしまった。
私も泣きそうになったが一生懸命こらえた。するとサミチャが「コミー！」と私の所に来て、抱きついてホッペにキスをしてくれた。
遂に、私はこらえきれず泣いてしまった。
そして、バックパックを積んだポカラ発のバスはカトマンドゥへと走り出した。
See you again to Samichhia.