ある時、アーグラの街のレストランで食事をしていると、近所にいる頭に青い頭巾を被った３０歳過ぎくらいの女性がニコニコしながらこっちを見ている。こっちも軽くスマイルで返すと「こっちへおいで」と言わんばかりに、手招きをしてきた。
高見山に似ているガッチリとしたレストランのオーナーが、「パロ(彼女の名前)は日本人が好きなんだよ、パロの家のチャイはうまいよ。行ってみな。ニバイ・ニバイ！」と言って笑わせてくれた。そしてレストランオーナーが行ったとおりにパロの家へ行った。
家に入ると、中はレンガ作りで８畳くらいの広さの部屋が２つあった。金持ちではないが、そこそこのイスラム家庭だろう。そして１０人程の大家族が住んでいた。部屋の中に入るとパロの子らしき子供が４・５人やってきて、外国人の私を歓迎してくれた。そして薦められるがままにチャイをご馳走してもらった。本当にこの家のチャイはうまかった。更にちょっとしたイスラム家庭の料理を出してくれた。遠慮無く頂いていると、５０歳くらいのパロの父親らしき男がやって来て「どうだ、料理はうまいか？」といい、正直あまりおいしくなかったが「イエス・グッドテイスト！」と答えると、「パロはいい嫁になるぞ！お前にどうだ？」といきなり結婚話を持ちこんできた。
イスラム教の女は結婚が早いと聞いていたので、彼女はてっきり結婚していて、この子供達は彼女の子供だと思い込んでいた。「えっ、彼女は結婚してるんじゃないの？こんなにたくさん子供がいるじゃないか！」と私が答えると、「いやこの子達は、わしの子供でパロの兄弟(姉妹)なのだ。Ｏｈ！それじゃＯＫだな。ノープロブレム。」と勝手に承諾したと思い込んでしまった。このあたりの都合のよい解釈は、典型的なインド人だ！
ちなみに５０歳くらいに見えた父親は４１歳。３０過ぎに見えたパロは２０歳で未婚だという。いやはやインド人の年齢は分らない。もちろん結婚の話は断ったが、インドに来て初めて訪れたインド人家庭。片言のイングリッシュトークで存分に楽しんだ。
翌日、その家の子供達に誘われて、家の屋上に行って子供達と遊んでいた。子供達と遊んでいるのは本当に楽しい。だがそんな楽しい時間もつかの間、しばらくするとパロがやってきて子供達を追い出して、私に「食事に行こう！」と無理やり誘う。そして、私が後日ヴァラナシに行く事を言うと「私をヴァラナシに連れて行け！」と言って、駅で切符を買いに行く為のリキシャーを勝手に呼んできてしまった。更に「私を日本に連れて行け！」とシツコイのだ！
そう、こんな彼女の強引さが段々恐くなってきたのだ！イスラム教では、男と女が付き合う事はもちろん、街を一緒に歩く事さえタブー。すなわちお付き合いイコール結婚なのだ！
そういえばツーリストからこんな話を聞いた。
とあるツーリストがイスラム教の女性と関係をもったが、ツーリストはその女性が既婚者とは知らずに関係をもってしまったのだ！イスラム教では既婚者と関係を持つと死刑になってしまう。当然ながらツーリストは死刑になり、相方の女性も同様に死刑になってしまったのだ。
別にパロとは何もないが、そんな話を思い出すとパロと話をするだけでも恐くなってきた。その日はすぐパロの家を出てホテルに戻った。
翌日、私は一人夜行列車に乗ってヒンドゥ教の聖地「ヴァラナシ」に向った。パロの家の家庭訪問は私にとっていい経験が出来た。何だかんだ言ってこの家のみんなが好きだったし楽しかった。そう日本に帰ったらお礼に写真を送ろう！
See you again to everybody!!