歩き出して間もなく、私のすぐ横にタクシーが止まり、タクシーのドアからスラットした、見た目３０代のアジア人女性が出てきた。
その女性は、少し低音な慌てた声で「カオサンロードは何処？」と地図を出してきた。「私はバンコクが始めてだからよく分らない。私もカオサンに向っている」というと、彼女は「じゃあ、あなたも乗りなさい！」と半ば強引にタクシーに乗せられた。タクシーはカオサンロードへと走りだし、彼女と話し始めると、彼女はマレーシア人で私と同じバックパッカーであった。また彼女は、マレーシアでマッサージ師をやっているとの事。そして「手や肩をマッサージしてあげるよ。」と言ってくれ、せっかくなのでお願いした。
マッサージは気持ちよかったが、彼女をよく見ると喉元・スタイルなどがどうも怪しい。声も男とも女とも言えない低音だ！そしてタクシーは、さっきから同じような所を何回も走っている。よく考えればカオサンロードは、歩いても行ける距離。こんなに時間かかるわけないだろう・・・。
もしかしてこいつはオカマか？という危険を、この時初めて感じた。これは危ない、この後何をされるのか分ったもんじゃない！どうにかしてタクシーを降りようと思った。
そこでとっさに考えついたのがトイレだ！「ヘイ・運転手。オレはトイレに行きたいんだよ。止めてくれ！」と言ったが、運転手は「もうすぐだ！」と言うだけだった。これは負けてられないと思い、「ダメだもう漏れそうだ。早く降ろしてくれ！早く降ろせ！」と子供のように駄々をこねて言うと、運転手は渋々車を止めてくれた。
何処かも分らない所で１人でタクシーを降り、トッサに足元に置いていた14kgのバックパックを取って、スリのように凄いダッシュでその場を走り去った。きっとこんなに一生懸命走ったのは、小学校か中学校の運動会以来だろう。やっぱりあの頃よりも年だ！重い荷物も祟ってすぐに息が切れた。
後で、カオサンの宿にいた日本人ツーリストに話を聞くと、カオサンロード周辺にはマレーシア人のオカマが出没するとの事。「日本人は狙われやすいから、気をつけた方がいいよ。」と言われた。